都市の防犯―工学・心理学からのアプローチ |小出 治

都市の防犯―工学・心理学からのアプローチ都市の防犯―工学・心理学からのアプローチ
小出 治
北大路書房 刊
発売日 2003-09



犯罪への考え方のパラダイムシフト 2005-04-02
自転車を盗まれて警察に行ったときに警察官に言われた。「鍵をかけなかったのですか?それは貴方が犯罪者を生んだことに貢献したのですよ」と。なるほど、犯罪をしやすい環境を提供した事によって犯罪が起きたのかと納得してしまったことがある。
 この本は犯罪という問題を物理的・社会的環境の側面から防犯しようという考え方を大まかに教えてくれる良本である。とくに工学の立場からではなく、心理学の立場からアプローチしていることには心理学専攻の人には是非読んでみていただきたい。従来、心理学から犯罪という問題を考えるとき、その視点は類型論や精神分析論などからの犯罪者の内面に目を向けてきた。しかし、その視点は多くの研究にも関わらず、犯罪の防止・抑止に貢献してきたとはいえない。もしこのような視点からの防犯・抑止が成り立ったとしたら、それは犯罪を起こす前に「起こすと思われる危険人物」を科学的根拠に基づかずに推定し拘束するというやりかたになるかもしれない。しかし、ここで「犯罪が起こりにくい・起こしにくい環境」によって犯罪を防犯・抑止しようという考え方にシフトすることによって効果がある活動が促進される可能性は大いにある。心理学は「環境と自己の相互作用」を重視しているのであり、犯罪という問題を環境的側面からアプローチすることによって今以上に貢献できるようになるだろう。この本はこのような従来の個人の内面に過剰に目をむけることに疑問を感じる人にとって良い刺激を与えてくれるだろう。
 ともあれ、アメリカのような犯罪処罰型の思考ではなく、犯罪防止型の思考をする日本人にとって、犯罪を「予防」する考え方を与えてくれるこの本は必読の一品である。
 ★が一つ足りないのは、もう少しボリュームがあれば、研究例における量的データを公開してくれれば、という個人的な欲からのものであって、内容自体に問題があるわけではない。


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posted by moris | 防犯の書籍
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